国友鉄砲の鉄とその流入経路

　鉄砲の銃身は、火薬の爆発力（ばくはつりょく）に耐（た）え、破裂（はれつ）やゆがみが生じないことが求められます。そのためには、粘（ねば）りけが多く、強くて堅（かた）い鉄が必要です。
　そうした良質の錬鉄は、出雲（いずも）や播磨（はりま）の真砂砂鉄を原料としてつくられました。真砂砂鉄は、黒雲母（うんも）花崗岩（かこうがん）の風化したもので、不純物が大変少ないのが特徴です。そうした砂鉄は、鈕押法（けらおしほう）という製法で鉄鋼にされました。

　国友では、出雲産の良質の鉄を多く使っていました。

　国友一貫斎は、その手記の中で次のように述べています。



（原文） 鉄、雲、播磨ヨリ出ルヲ上トス、備中備後次、奥州仙台、安芸ノ広島又次、伯耆美作石見又次、日向産又次、但馬鉄最下品、…… 釼、播磨ノ宍粟郡（千種町）ヨリ出ルモノヲ最上トス、千種村ニテ出ル故千種鉄トモユウ、 出雲ノ鉄最上品、伯耆、美作ヨリ出物次也、石見、出羽又次……

（現代語訳） 鉄は、出雲（いずも）・播磨（はりま）のものがよい。備中（びっちゅう）・備後（びんご）は次、陸奥（むつ）・仙台・安芸（あき）の広島はその次、伯耆（ほうき）・美作（みまさく）・石見（いわみ）は次の次、日向（ひゅうが）産のものはまた次、但馬（たじま）鉄は、最も悪い…… 釼（ケン：つるぎ）は、播磨の宍粟郡（千種町）のものが最上で、千種村で産出するので千種鉄ともいう。 出雲の鉄も最上品で、伯耆、美作の産出のものは次、石見や出羽のものはまたその次……


　このように、鉄砲鍛冶師たちは、良い鉄を選び抜いて使っていました。

　また、原料の鉄の購入は、鉄商人に頼るだけでなく、地鉄調べのために、出雲まで出かけていったこともあるといいます。

　国友で使っていた鉄は、主に次のようなルートで運ばれてきました。

■ 室町時代から江戸時代初期


出雲

宇竜 （後に安来）

北国船 （日本海経由）

敦賀

国友



■ 江戸時代中期から江戸時代後期
　　　（寛文１２年（1672）、西廻り廻船開業のため、敦賀の港は衰退）


出雲

安来

西廻り廻船 （瀬戸内海経由）

大阪

大津

（琵琶湖）

国友

＜参考Link＞ 　島根県飯石郡吉田村のホームページ 　島根県仁多郡横田町のホームページ 　島根県安来市和銅博物館 　たたらの話（日立金属株式会社）